反応しない練習(草薙龍瞬、角川)

「反応しない練習」は副題の「あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な『考え方』」からわかる通り、ブッダ、つまりお釈迦様の教えを現代人の生活へも活かそうというものです。

え、お釈迦様? 架空の存在じゃないの?

なんて思った人もいるかもしれませんが、お釈迦様というのは約2500年前に実在した人物で、ゴータマ・シッダールタさんといいます。

仏教というのはこのお釈迦様から始まっているわけですが、今やその内容は、始まりの頃に比べるととてつもなく幅広いものになっています。

まさに「お釈迦様でもご存じない」くらいでしょうか。(笑

お釈迦様の教えで自分の心を制御できる?

それでこの「反応しない練習」は特に、お釈迦様が直接語ったとされる内容の中でも、「心を操るテクニック」に焦点を当てたものとなっています。

心を操ると言っても、仏教ですから、苦しみを消すために自分の心を操るということです。

決して他人の心を操って高額商品を売りつけようとかそんな話ではありません。(笑

それから、あくまで心理的なテクニックが中心となっていますので、「スピリチュアル系は嫌い」という人でも安心して読めます。逆に輪廻転生などの話を期待すると期待はずれとなります。

さて。

苦しみを消すための3つの単純な方法

では苦しみを消すためにはどうすればいいのかというと、この本のタイトルからも分かる通り「反応しなければいい」というわけです。

特に現代人は情報の洪水にさらされていて、心が無駄な反応をしがちですので、そのことによって苦しみが生まれやすい状態にあります。

だから、いちいち無駄な反応をしない、これが「反応しない練習」の骨子となっています。

では無駄な反応をなくすためにはどうすればいいのか、という話になりますが、これは「自分の心に対して客観的になる」または「無駄な思考を増殖させない」ということが大事になってきます。

そのためにやるべきこととして、3つのことが挙げられています。

・言葉で確認する
・感覚を意識する
・貪瞋痴(とん・じん・ち)に分類する

言葉で確認する

言葉で確認するというのは、心のなかの状態を言葉で確認してみるということです。思考を進めていくのではなく、あくまで「心の状態を確認するだけ」です。

「緊張している」「不安を感じている」「混乱している」「イライラしている」等々。

言葉で説明することで自分の心に対して客観的になることができ、心の「反応の連鎖」に飲み込まれずにすむというわけですね。

これをやらないとおそらく・・・例えばある人に対して怒りを感じた場合、その怒りに任せて思考を展開させてしまい、ますます怒りを募らせる・・・ということにもなってしまうでしょう。

感覚に集中する

2つ目の「感覚を意識する」というのは、心の反応に意識を集中するのではなく、体の感覚に意識を集中することで、「無駄な反応」の増殖をストップし、自然消滅してもらおうというものです。

たとえば呼吸の動き、お腹がふくらんだりしぼんだりする感覚や、歩くときの足の裏の感覚など、感覚ならなんでもいいのですが、それをしっかり感じて心のなかで言葉にしていきます。

呼吸であれば「ふくらみ、ふくらみ・・・」「ちぢみ、ちぢみ・・・」など。つまりこれって、マインドフル瞑想とか、ヴィパッサナー瞑想と呼ばれる方法ですよね。

貪瞋痴(とん・じん・ち)に分類する

3つ目の「貪瞋痴に分類する」方法は、1つ目と同じく心の反応を客観視することで反応の増殖をストップさせようというもの。

貪瞋痴の貪というのは「貪欲」のことですね。度を超えてなにかを欲してしまう気持ち。

瞋というのは「怒り」のことなんですが、仏教では悲しみもこの瞋に分類します。悲しみを弱い怒りだと解釈しているんですね。

痴というのは愚かさですが、愚かさからくる「妄想」といったほうがわかりやすいです。貪欲でも怒り悲しみでもないネガティブな心の反応はこの痴に分類すると良さそうです。

常に心を観察しておいて、なにかネガティブな反応が生まれそうなら、すぐに「貪瞋痴のどれに当てはまるだろうか」と考えると、その反応を「外」から眺めることができるというわけですね。

仏教=欲の否定、ではない

さて、「貪欲」という言葉が出てきましたが、仏教というと「欲を消しなさい」というイメージがありますよね。

ところが面白いことにこの本ではすべての欲を否定するわけではありません

ある欲を持つことによって、心がポジティブな状態になり生きる力となるのなら、その欲は肯定されます

逆に、ある欲を持つことによって満たされない気持ちに苛まれ、ネガティブな反応が起こるようなら、その欲は「貪欲」として否定されます

なのですべての欲を否定して植物のように生きましょうというのではないんですね。良い欲は大いに活用して、活き活きと生きましょうというわけです。

ということですが、これら以外にもいろいろと自分の心を操るテクニックが紹介されていますので、是非読んでみるといいと思います。

初めてお釈迦様の言葉に触れる人は、その合理性に驚かされるかもしれませんよ。

 

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