人間の心理の傾向が、損小利大どころか損大利小を招くことが、プロスペクト理論によって説明できるということを以前書きました。
株取引やFXで損切りが遅れる人はプロスペクト理論を知っておくべし
二重の罠
でももう一つ、損小利大を阻む心理的傾向があります。それが「現状維持バイアス」です。人間の判断は、現状維持バイアスに歪められることが多いんです。
まったく。
プロスペクト理論に現状維持バイアス。
自然の心のままトレードに取り組めば、必然的に損をするなんて、相場とは怖い世界ですね。^^;
さて。
その現状維持バイアスとは何か、ということですが。
人は「未知」が怖い
これはまあ、名前のとおりですよね。
「人は未知のものに飛び込んでいくより現状を好む」
ということです。
これがどのように損小利大を阻んでいくのか?
たとえば、100万円である株を買ったとします。
これが1週間で110万円まで上がったとします。そして、トレンドも続いているということで、もっと待てば、もっと上がる確率が高いとします。
でも、いくら上がる確率が高くても、未来はどうなるかわかりません。だから「今の110万円でもう売ってしまおう」と考えることになります。
未知の未来よりも現状の110万円を優先させているということです。
これによって、人間本来の心理傾向からすると、利食いが早くなりがちであり、つまり「利大」にはなりにくいということになります。
一方。
損している場合は?
100万円で下がってしまった株が90万円になってしまった場合。
これも利食いの時同様、すぐに損切りできればいいのですが、こちらはそうはいきません。
なぜなら、プロスペクト理論でも説明されている通り、「損失をゼロにする」方を強く優先させてしまうからです。
となると、「損失が確定していない」状態を「現状」とみなし、これを維持する方を選択してしまう、ということになりがちなんです。
つまり損切りせず、株は塩漬けとなってしまうというわけですね。そうして値が戻ってきて、損失がゼロになることを祈り続けることになります。
ということで。
「普通の人」を自認するなら要注意
プロスペクト理論や現状維持バイアスを知った上で、しっかりと意識してトレードしないと、損失を膨らませてしまう確率が高くなる、ということになります。
2つの心理的傾向によって、「普通の人」は自らを罠にはめてしまうわけですね。しっかりと意識していきたいと思います。
この現状維持バイアスですが、何もトレードだけに限ったことではありません。
例えば「うちの会社はブラックだから」なんて、不満タラタラにもかかわらず、その会社を辞めるでもなく、他の収入源を得るために努力するでもない・・・
よくあるパターンだと思いますが、これも現状維持バイアスのなせる業だと考えられます。
しかも、現状がいかにひどい状況でも、人間はそれに慣れてしまうものなので(苫米地英人さんはこれを「コンフォートゾーン」と呼びますね)、現状維持バイアスは手強い罠ですね。